サテライト68 小池七池伝説【山田地区/小池】

小池七池伝説阿蘇市山田の小池(こうじ)地区には、「小池七池伝説」が伝承されています。現在も伝説にまつわる七つの池(池の跡含む)が残され、地域住民によって大切に守られています。

中でも、実際に泡の出る「泡池」や清夜姫が大蛇になって沈んだといい、現在は竜神様が祀られる「本池」は多くの人から親しまれています。

「小池七池伝説」

豊後竹田の豪族に美しい姫君が誕生した。星の美しい夜に生まれたので清夜姫(せいやひめ)と名付け、父母はもとより一族や家臣からも可愛がられ、すくすくと成長して16才の春を迎えた。

その頃、菊池の城では若君に嫁を迎えようと方々に良い娘を探していたが、清夜姫の噂を聞きつけ、家来をやって調べさせると、容姿も心ばえも若君にふさわしい姫君であることが分かった。菊池家では、早速阿蘇大宮司に仲介を依頼した。縁談はめでたく整い、春の終わりごろ輿入れ(こしいれ)の運びとなった。

ようやく暖かくなったころ、竹田から滝室坂を通って、手野・山田と6人の腰元と警護の武士達に付添われて、姫の行列は阿蘇の山々を眺めながら西へ西へと進んで行った。

小池のほとりに差しかかった際、姫が「水を飲みたい。」と言われるので輿を止めたところ、姫は降りて池のそばまで行って、何を思われたか突然身を翻(ひるがえ)して池に飛び込み、みるみるうちに蛇身と化して池の中に沈んでいった。成り行きに動転した腰元たち6人も悲嘆のあまり次々に入水して、すべて大蛇となったという。

警護の武士たち3人は直ちに馬を走らせて、菊池の家臣たちの待つ車帰(くるまがえり)に駆けつけ、事の次第を伝えたあと引き返し、他の付人9人とともに小池の北山に登り、はるか竹田の空を拝み割腹して果てた。腰元の6体の大蛇は、赤池・青池・寄り池・泡池・壷池・鶴池にそれぞれ分かれて棲み、本池とともに「小池の七池」といわれる。

その後、いつの頃からか下野の男大蛇が、小池の池に愛を求めて通うようになった。黒川の流れを遡って来て、松ヶ鼻の往還を横切って小池の池に入ったので、雨の日は道が乾き、晴れた日には通りが濡れていたと里人は伝えている。こうした噂をはばかったのか、2体の大蛇は、波野の小池野(しょうちの)の池に移り住んだとも伝えている。

また、警護の武士3人と近侍(きんじ)の付人の墓と称する石が北山のおばねに今も残っている。小池の村人は旧暦の11月17日になると、七池の竜神祭を催し、7つの竹筒に甘酒を入れて供養していたが、昭和20年頃からすたれてしまった。工藤家の近くに今も竜神がまつってあり、大切に供養されている。

(阿蘇市教育委員会『くらしのあゆみ阿蘇―阿蘇市郷土読本―』2008 より)