コルナゴ部長こと中尾公一さんレポート「12月の満喫ライド」

コルナゴ部長こと中尾公一さんの最新レポート「12月の満喫ライド」が届きました。

12月11日の暖かい朝と積雪の25日に阿蘇満喫ライドを開催した。
11日の朝、道の駅阿蘇のサイクリスト専用駐車場に着いて車のドアを開けると、底冷えする寒さと思いきや陽が射して意外というか拍子抜けするほど暖かい朝だった。氷点下に備えて様々な防寒具を用意してきたが、結局家を出た時の格好のままネックウォーマーとグローブとシューズカバーで3つの首を防寒して集合場所へ行った。厳冬期に阿蘇でサイクリングというと引いてしまうのが普通だろう。でも太陽さえ出ていればこんな朝もあり、真冬の阿蘇を走れることに来て良かったとみなさんの笑顔が語っていた。

しかし、さすがに冬になるとエントリーされる人は少なくなり今回は5名だった。「たった5名」と思うか、それとも「5名も」と未来を感じるか、わたしは後者で装備さえ整えば冬のサイクリングも魅力があると思うし、ゴールした後に振り返る達成感は実に心地よいもので寒に打たれたこそである。

心が折れそうなライド後の夕食は深い味わいの美味しさになる。そんな自分へのご褒美を、私は走っている最中に何をどこで食べるかを具体的に決めて、頑張ったこその「権利」と言っている。例えば「上りが多い今日のライドを終えたら分厚いポークステーキとよく冷えたビールを飲む権利がある」、「終日底冷えする今日のライドの後は焼き鳥屋でホルモン煮込み、つくね、鳥皮、豚バラを熱燗で飲む権利がある」と最初の光景を思い描いて、儀式のように声を出して自分に負けないようにしている。早い話、ニンジンをぶら下げるわけだ。

「権利がある」は、ヘミングウェイの訳者によって本のタイトルも違うが、愛読書の大久保康雄訳「心が二つある大きな川」(Big Two-Hearted River)に出てくる言葉を真似たものだ。主人公のニック・アダムスのアウトドアの情景がヘミングウェイの文体でいきいきと描かれている小説で、キャンプ道具が入った重いリュックを背負い、手には鱒釣り用の釣竿を持って山に分け入り、ポイントに到着して食事をするシーンがある。
『ニックは腹がへっていた。これほど腹ぺこになったことは、これまでなかったような気がした。彼は豆入りの豚肉の缶詰とスバゲッティの缶詰をあけて、全部フライパンのなかへ入れた。
「苦労して運んできたんだから、おれにはこいつを食う権利があるんだ」と彼は言った。その声が、しだいに暗くなってゆく林のなかで異様にひびいた。彼はそれっきり口を開かなかった。』
この本に影響されて中学3年からキャンプを始めた。以来、深い森や山女魚のいる川、焚き火や冒険には呪文のようにニックの言葉を唱え、今ではサイクリングの儀式のようなものになっている。
さて、ライドはというとスタートして内牧や北外輪山の麓の道を巡って、この日ひとつだけの上りになる一の宮から城山展望所までのやまなみハイウェイをゆっくり走った。城山展望所に着くとさっきまでの太陽が雲に隠れて寒さを感じるようになった。一息入れて再スタートすると、福岡から来られたマスモトさんの前輪がパンクしていた。みんなで協力して修理を終えると北風が強くなり底冷えしてきた。3名の方はリュックに防寒着やウィンドブレーカーを用意されていたのですぐに羽織られたが、私は防風生地と二重構造になったアンダーと極寒用のジャケットの2枚だけ、なので身体を暖めるためアップするように走って5km先の昼食場所のうぶやま牧場へ急いだ。

うぶやま牧場到着、いつもなら美味しいアイスクリームを頼むところだが温かい食事を求めてレストランへ直行した。ここは標高700mの阿蘇外輪山にあり、大きな風車が目印だったがそれが無くなっている。レストランの方に尋ねると、設計寿命年数が20年らしくそれを超えたため撤去されたとのこと。建築物のない広大な草原に目立つ風車だったので道に迷ったような気さえした。
肉うどんとドリンクセットの温かい飲み物で暖まり外に出ると一層寒さが身に沁みた。これ以上気温が下がらないうちに、町古閑牧野から箱石峠を下って帰ることにした。

町古閑牧野の展望スポットでは曇りのため根子岳や高岳を眺めることはできなかった。代わりに地元の方が昔の草原景観を伝えようと草小積みが作られていた。これは冬の間の牛の餌にする野草を保存するもので、昭和中期くらいまで見られたが、今では作る農家はほとんどいない。理由は多くの家で牛を飼わなくなり、畜産農家も機械でロールするのが主流になっているからだ。草小積みは水はけをよくするために、斜面に作られ中は暖かいので蛇などもいたりするそうだ。阿蘇地域では昔ながらの草原景観を伝えるため観光客が目につくところに草小積みが作られている。
ここからは箱石峠のダウンヒルになる。ありったけの防寒具を着るように案内した。私はマスクしかなく、無いよりいいのでネックウォーマーに重ねて下った。

ストラバのスイッチを忘れていたのでスタートして内牧付近までが消えている。
朝はポカポカだったが、山に上ったら太陽が消えて北風とともに気温が一気に下がり震えたライドだった。道の駅阿蘇にゴールすると、ちょっとした冒険から帰還したような気になった。でもこのような刺激がたまらなく楽しい。

夜は家内にスペアリブのリクエストをしていたので近くの居酒屋からテイクアウトしたものが夕食に並んだ。寒かったことを振り返り、「俺はこれを食う権利がある」と小声で呟いて、ハーモニカを吹くように骨に付いた肉に嚙みつくと、そのボリュームと肉汁に圧倒された。また寒さを求める懲りない日が続くだろう。

12月25日の阿蘇満喫ライドは、前日の天気予報で終日氷点下近かったので、凍結防止剤で溶かす国道以外は凍結しているところもあり、ロードバイクでの走行は危険と判断してグラベルなど走るMTBライドに変更した。10時に道の駅阿蘇に集合してどこに行こうかと打ち合わせて、スノーライドが出来るかもしれないということになり町古閑牧野に行くことにした。

急きょだったので一般参加の方はキャンセルになったので、井上君とミユキさん、下城さん、私の4人で試走を兼ねて行って来た。道の駅阿蘇で弁当や飲み物を買い、MTBは車に積んで町古閑牧野の農業基地に行きそこベースに雪の牧野ライドを試走した。

井上君とミユキさんは阿蘇にいても雪が積もった牧野を走るのは初めてとのことだった。2人とも平日は仕事なので日曜に雪があるとは限らないので当然のことだろう。

スノーライドのフィールドに着くと陽の当たるところは雪が解けて凍っていたが、吹き溜まりになっているところには雪が残っていたので早速行ってみることにした。

タイヤが雪を踏む「ポクポク」という久し振りに聞く音は何ともいえない。

あそたんツアーズの藤原さんの話では、少し前までは草原一帯が雪原になっていたが吹き溜まりだけでも十分スノーライドを楽しめた。
雪の吹き溜まりを探してのライドもなかなか面白い。

ダウンヒルができる丘に上ってみたが、今日はe-MTBではないので長い上りに2回挑戦する気にはなれなかった。やはりe-MTBと牧野ライドの相性はずば抜けていい。スノーライドのスタイルは、防寒着等入れたリュックが背中と密着するので汗が出て冷えると寒くなる。井上君の腰用のバッグは容量が少ないものの背中の汗冷えは解消できる。足元は時間が経つほど濡れがしみ込んでくるので、防水シューズやスパッツ(ゲイタ―)があれば長い時間でも楽しめる。グローブも防水用、ウェアは汗でも蒸れない上下ともレインウェアだと完璧だろう。とにかく濡れて冷たくなるとヤル気が失せてしまうので装備は大切。

昼を過ぎると雪が解け始め、草のある牧野は平気だが、根子岳が間近に見えるところは多分泥でぬかるんでおり、後が大変なのでとりあえず昼食に農業基地に戻った。雪原の牧野はMTBが汚れるどころか逆に洗ったように綺麗になる。ウェア類も泥で汚れる心配はほとんどない。あと温かい飲み物、私の場合は少し甘めのミルクティーを保温ポットで持ってくればさぞ美味しいだろうと思った。
食事を終えると2km先にあるドライブインで温かいうどんやチャンポンを食べに行けばと後悔した。風除けの倉庫から出て走る準備をしていると、暖まった身体に当たる冷たい風が濡れたウェアで震える寒さになったので帰ることにした。雪山でのe-MTBでは汗をかくことはないが、MTBだと速乾性と防水を兼ねたウェアの組み合わせが必要になってくる。

11日のライドは朝の暖かさに気をとられ、こぶしくらいに納まるウィンドブレーカーという「もしもの対策」を忘れた。25日は車で現地に行くのでアンダーやグローブを含めた着替えを持参すれば午後からでも走れたはずだ。その着替えも汚れていい上下カッパの「もしもの対策」に備えておけば帰ってからの洗濯も面倒ではないだろう。

このように12月のライドは長年阿蘇を走っているにも関わらず「もしもの対策」が出来ていなかった。ただし、もしもの対策とは、何でも持っていけばいいというものではなく、何が必要かを考える前に「何が必要でないか」を考えることが必要だろう。寒さが厳しくなると自転車は面白くなる。最小限のもしもの対策と「権利」を求めてペダルを回したいものだ。

 

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