湧水と花々に囲まれた産神社。伝説の「乳水」を見ることができるかな? ~桜と芝桜の名所~

 阿蘇市狩尾地区にある「産神社」は、狩尾3区の氏神として親しまれていますが、神社の湧水をもらってお粥を炊くと乳の出がよくなるという言い伝えから妊婦の参拝も多く、縁結びや子宝、安産を願ってお参りする人も多い神社です。

 県道149号線沿い、阿蘇外輪山の裾野に位置し、境内は木々に囲まれています。境内の奥、社殿両脇の池は豊富な湧水をたたえています。

 毎年4月上旬ごろになると神社一帯に桜が咲き誇り、参拝者の目を楽しませています。また同じ時期、神社の脇を流れる四ツ江川、この左岸およそ500mにわたって植えられた芝桜も咲き乱れ、新たな花の名所として話題を呼んでいます。

 これらは、いずれも地域の方々が年間を通じて管理されています。
 今回は、神社や芝桜の魅力、地域住民の取り組みについて狩尾3区区長兼、産神社宮総代長の五嶋一俊さん、元宮総代の山本敬一さん、宮総代の山本勇司さんにお話を伺いました。

 (左より山本勇司さん、山本敬一さん、五嶋一俊さん)

 最初に「産神社の生き字引」とも言われている山本敬一さんより、神社について詳しく伺いました。
 90歳にはとても見えないエネルギッシュな方で、私たちがASO田園空間博物館の活動を始めた当初より、産神社の管理者代表として様々な行事に関わってこられました。

 今から約200年前、細川家重臣の三渕永次郎がこの地を訪れ、豊富な湧水に感銘を受けて建立したのがこの産神社であると伝えられています。

 祭神は国之常立神(くにのとこたちのかみ)ほか11神と豊玉毘売(とよたまひめ)。豊玉毘売は子育てにとって大切な神様だといわれ、産神社も乳の出を願う妊婦さんや子宝、安産祈願などの参拝者が多くあります。
 このため、拝殿には乳房の形をした木彫りのお供え物が多く奉納されてあります。
 山本勇司さんもかつて娘の安産を願ってお参りをしたことがあり、その結果無事元気な女のお孫さんが誕生。今は小学校1年生とのことです。

 現在は美しい桜の木々に囲まれていますが、以前は神社全体が杉に覆われ鬱蒼としていました。そのため、社殿が日陰になり腐敗が激しかったので、平成10年頃、神社を管理する氏子である狩尾3区で景観づくりも兼ねて杉の伐採と桜やモミジの植樹活動を始めました。植樹はその後も続けており、今では春は桜、秋はモミジを楽しめる名所となりました。

 また、産神社といえばこちらの美しい池。

 現在は神社裏の山の湧水を引いてきて水をためていますが、昭和30年代までは湧水が豊富に湧き出ており近くに精米のための水車小屋もありましたが、その後枯れてしまいました。
 しかし、この池には不思議で素敵なエピソードがあります。
 平成28年4月に発生した熊本地震では、狩尾地区も甚大な被害がでました。
 地域を流れる水道管も損傷し、地域一帯の田畑に水を流すこともできない状態でした。このままでは田植えも絶望的で農家はみな今年のお米をあきらめかけていた矢先、50年前に枯れていた産神社の池に再び水が湧き出できました。
 このおかげで集落の田畑に水を流すことができ、田植え、そして無事収穫まで果たすことができました。
 その後、徐々に湧水量は減り、水は湧かなくなってしまいましたが、地域の方々は「本当に奇跡的な出来事だ」と産神社への信仰心がより一層強まったそうです。

 また、産神社のもう一つの湧水。
 ここは何年かに一度「乳水(ちちみず)」と呼ばれる乳白色の水が湧くことで有名な湧水。現在は透明な水が少しずつ湧き出ています。

(湧水横に建てられている記念碑は、山本敬一さんがご自身と奥様の米寿記念に寄贈したそうです。)

しかし、こちらも熊本地震直後、乳水が湧出。地域住民はみな驚きました。

(山本敬一さんが撮影した乳水。これは驚きです!)

 社殿の修繕も定期的に行っており、もともと吹き抜けだった拝殿は平成6年に壁を建築、悪天候時も神事が行いやすくなりました。昨年は床の張替えを実施しました。

「拝殿については、あと絵馬の復元さえ果たせれば申し分ないと思っています。現在、拝殿内に三十六歌仙の絵馬が奉納されています。しかし、劣化が激しく今では何の絵なのかも把握できない。何とかしてこれを復元できないかと10年前から働きかけていましたが、阿蘇中央高校と翔陽高校の美術部員の力を借りて今年の秋頃にはレプリカが完成する予定です。

 現物を修復しようとすると専門家の力と相当な費用が必要になる、住民に負担をかける訳にはいかないので、二つの高校の美術部の学生の協力を得て画材などの材料費のみで請け負ってもらうことができました。それぞれ絵馬半分ずつを担当してもらっていますが、限られた人数であったにも関わらず根気よく続けてくれています。卒業による担当者交代などもあって時間はかかりましたが、念願の完成も近くなりました」

完成後は除幕式を行う予定とのこと。完成する日が待ち遠しいですね。

「神社の行事は、11月22日~23日にかけて行われる例大祭が一番大きなものになります。22日は神事のみ執り行いますが、23日は子どもからお年寄りまで氏子が皆集まって盛大に祭りを行います」

 毎年虎舞奉納を担当するのは子ども達。日々練習を重ね、当日は見事な舞を見せてくれます。

 その他、毎月1日と15日に清掃活動を行っています。1日は狩尾3区老人会である「産水会」が担当し、15日は宮総代が担当します。


 朝8時過ぎに神社に集まり、来た者から順次作業を開始します。

 概ね男性が境内の落ち葉や雑草の整備を担当し、女性が社殿の清掃を担います。

 2月1日に実施した清掃活動にはおよそ20人が集まっておられました。地域の団結力があらためて伝わってきました。

 最後に山本敬一さんは、
「地域住民はみな産神社と関わり合いながら生活している。私が長い間生きてきて感じたのは、神様にお願いすることも大事だが、願いをかなえるためには自分も努力することが必要だということです」
と話しておられました。いろいろな経験や体験を積まれた敬一さんの言葉は私の心の中にスッと入っていきました。


 狩尾の見どころは産神社だけに終わりません。
 冒頭でお伝えしたように、産神社近くの四ツ江川川岸には、毎年3月下旬から4月に可愛いピンク色の芝桜が咲き誇る様子を楽しむことができます。

 この芝桜の管理は産神社の氏子でもある狩尾3区で行っています。
 芝桜の植え付けを始めたのは平成27年。当時通行可能だったラピュタの道から集落を眺め、ここに植え付けたらきっと素晴らしい風景になると現在の場所に植え付けることに決めたそうです。
 その後、毎年少しずつ面積を広げ、現在は4,000株~5,000株植え付け、長さは300m以上になりました。
 毎年6月と8月に植え付け地の除草作業を行い、9月にシートを張ります。その後、10月~11月にかけて株の植え付けを行います。地面にシートを張る必要がある分、他の植物を植え付けるより手間がかかるといいます。

 植え付けはシート45㎝幅に印をつけ、そこをカッターで切り、約10㎝×8㎝の穴を掘って肥料をまき苗を植えます。川岸で傾斜もあり作業は大変です。

 しかし、集落の景観づくりをして、多くの人に喜んでもらいたいという想いから現在まで継続してきているそうです。

 地区代表であり、この作業のとりまとめも行っている五嶋一俊区長は、
「産神社や地域の絆、集落の景観など先代より守られてきたものを私たちも将来の子どもたちへつないでいきたい」
と話しておられました。

 地域の皆さんが守り続け、多くの人に親しまれている産神社や芝桜。ぜひ、みなさんも足を運んでみてください。

Vitz Ayaka

■産神社

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