コルナゴ部長こと中尾公一さんレポート「牧野ライドとサイクルガイドアップデート講習」

コルナゴ部長こと中尾公一さんから、最新サイクルレポートが届きました。

私有地である阿蘇の草原(牧野)をガイドし、古道を整備する取組みを視察し、「サイクルガイドアップデート講習」を受講なさいました。

いつも多方面に活躍なさっています!どうぞお楽しみください。

 

菊池の旅館の頃からだから12年以上前からお付き合いしている自転車仲間が阿蘇に来られた。神戸からOさんと1週間後に岐阜の大久保さんは奥さんと一緒に寒い阿蘇に来られた。それぞれ理由があって、Oさんは定年退職の報告と阿蘇に移住を希望されていたが、空き家と農業以外の仕事が見つからなかったので、あと3年神戸で過ごして阿蘇移住の計画を立てるということだった。Oさんは救急救命士の仕事だったのでアウトドア関係の人材には活躍できそうだと思ったが残念だった。以前にも自転車乗りの数名の方から阿蘇移住の相談があったがコロナですべて途絶えてしまった。

 

大久保さんはコロナワクチン接種後にギラン・バレー症候群を発症し休職したままだ。一時は生死を彷徨い35kgも痩せていた。現在は旅行したり自転車に乗ったりと回復されたように見えるが、そのあとの疲れのダメージが酷くて、しばらくは寝たきりだと後遺症が残る顔で話された。食べ物の呑み込みも苦労されていて、完全治癒の見込みはまだまだ先のように感じたが、気持ちは健康なので安心した。そんな人生が一気に変わった大久保さんだが、夫婦で快適なアシストのE-BIKEで阿蘇の大自然を走られる姿を見て牧野ライドの新たな魅力を教えてもらった。

 

2人とも同じフィールドのE-BIKEで走る牧野ライドに案内した。

今の時期は箱石峠の上にある町古閑牧野と、かぶと岩展望所付近の西小園牧野を走ることが出来るが、あまり時間がなかったので道の駅阿蘇からスタートできる阿蘇ハイランドゴルフ場の上にある狩尾南牧野と、道の駅阿蘇から近く田んぼの中の小高い丘の二辺塚に行った。いずれも牧野組合の私有地なので牧野ガイドの案内がないと立ち入ることができないフィールドだ。

狩尾南牧野は阿蘇谷と北外輪山の眺めがいい。上って下るルートだが手軽に行けて牧野の魅力を知るにはいいところだと思う。ちなみに宮澤崇史さんを野焼きの後に案内して大絶賛された。

 

二辺塚も初心者の方にも楽しむことができる。周辺のグラベルも阿蘇らしいし、今の時期の野焼きのあとは異空間ともいえよう。

 

休憩しながら3時間ほど走って積もる話もあるのでそれぞれランチに行った。

 

大久保さん夫妻は、クルーズトレイン「ななつ星in九州」で朝食を提供する「オルモ・コッピア」へ行った。

ランチは畑の野菜ワンプレートセット、畑の野菜パスタセット、それに肥後牛の薬膳カレーセットの3つになる。薪ストーブがある落ち着ける店内でゆっくりと食事しながら、病気発症前の超ハードな仕事から一変した現在の状況を「これも人生、与えられた道を自分なりに楽しむ」と話されて再会の約束をした。

 

独り者のOさんは、あそら食堂の玄米ごはんのチキンカレーが合うだろうと閉店時間の13時30分にどうにか間に合って、オーナーのトモミさんも気持ちよく受け入れてくれた。

Oさんは阿蘇で暮らしを体感する観光移住体験ツアー「愛車でGO!」という1泊2日の阿蘇市の体験に参加された。でもそこでは移住の壁が解決できなかった。南阿蘇では「南阿蘇村移住サイト」というお試し移住定住体験があるそうで、このような壁を低くするプランが阿蘇市にあればといわれていた。

『【観光で訪れる南阿蘇村】と【日々生活する南阿蘇村】では見える景色が違うはずです。その違いを知っておかなければ、移住後に後悔してしまうこともあるかもしれません。移住は人生を左右する大きな決断です。あなたにとって最善の判断ができるよう、お試し移住体験施設をご活用ください。』

今まで多くの自転車乗りの方と出会ったが、特に内牧温泉の旅館時代は全国からリフレッシュ休暇で来られる方が多かった。中には家庭問題、離婚や相方との死別、病気治療でしばらく自転車に乗れない、退院記念などその人の人生の節目に来られる方もいた。私のお客さんということから1対1でゆっくり話す機会が多かったのでそんな身の上を話されたと思う。そして、阿蘇に住んでみたいという話もよく聞いた。退職後、阿蘇に住んで私みたいな自転車のある生活をしたいという方もいた。これは今後のサイクルガイドの人材として明るいことで、実はOさんも少し考えていたんじゃないかと思った。

 

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スポーツイベントの企画運営をするローカルゲインの森本幸司さんの案内で「阿蘇フィールズランニング実行委員会」で整備された小嵐山の中腹から一の宮町手野の集落を結ぶ古道を案内してもらった。

 

阿蘇谷の集落と外輪山の上にある草原を結ぶ坂道は、かつて人と牛馬が往来した古道で放牧や採草に利用されていたことから「草の道」と呼ばれている。阿蘇フィールズランニング実行委員会では、阿蘇の地域資源として草原文化を伝承するためにも、この古道を走るトレイルランニングのルートとして再生する活動を続けられている。

 

倒木や木の枝を取り除いて整備すると、一個一個運んできた石を並べた石畳の道が現れてくる。すでには廃道となった道をトレランコースとして活用することは、地域資源の修復であり草原維持をスポーツでアピールする試みだと思う。

 

案内してくれたローカルゲインの森本幸司さんは、2019年トレイル世界選手権日本代表であり、今年6月にオーストリア・インスブルックで開催される「World Mountain & Trail Running Championships 2023(マウンテン&トレイルランニング世界選手権2023)」の日本代表選手に選ばれショートトレイル(44.6km 3,132mD+)に出場される。

 

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日本サイクリングガイド協会(JCGA)エリートライセンス取得のサイクルガイドの平塚吉光さんの「サイクルガイドアップデート講習会」に参加してきた。JCGA のライセンスには受講実績と検定結果、総合的な活動状況等により7つのガイドクラスがあり、平塚さんはその中でも上から2番目の難易度の高い「Elite」を取得されレベルの高いガイド及びガイド講習会を開催されている。

平塚さんは元ロードレース選手でチーム・ブリヂストン・サイクリングをキャプテンとして支えてこられたが、2019年に退団され同時に選手としても引退された。以後は「#13cRR 」代表として日本サイクリングガイド協会/日本サイクリング協会公認ガイドとして活動されている。JCGA のライセンスには受講実績と検定結果、総合的な活動状況等により、7つのガイドクラスの中でも難易度の高い「Elite」を取得されレベルの高いガイド及びガイド講習会を開催されている。

平塚さんとは一緒に走ったことはなかったが、昨年開催されたスパークルおおいたレーシングチームのサイクリングイベントで、的確な声掛、ハンドサインによって統率されたガイドをされているのを見て、下城さんと私は安全と楽しさを兼ねたプロフェッショナルなサイクリングガイドに目を奪われた。そこで平塚さんのガイド講習会を阿蘇で出来ないものかASO田園空間博物館で検討してもらい今回の開催となった。

 

サイクルガイドの業務において可能な限りリスクを軽減する平塚さんの講習会は2日間の開催となった。初日は座学でJCGAガイドの理念を学んだあと基礎ライド講習では、「走行しながらの後方確認」と「ハンドサイン」の後、道の駅阿蘇の周辺の交通量の少ない農道などの7kmコースで模擬ツアーの実技講習が行われた。

 

走行しながらの後方確認とは、サイクリングする隊列の最後尾まで確認できなければならない。そのためガイドが走る位置は左端よりややセンターライン側となり、お客さんをロストしないよう30秒ごとの後方確認となる。ハンドサインは腕を真っ直ぐ横や上に延ばして、手の平と甲、指を閉じる、開くことで視認性を高め、歩行者や車を運転するドライバーにも伝わるハンドサインとなる。ロードバイクに乗った状態では背中が丸くなるため、手を上げたつもりでも真上には上がっておらず何度も反復練習する必要があった。

2日目は参加者を安全に案内する上での注意点やノウハウの学びのため公道上、それも意図的に交通量の多い場所ということで、南熊本駅に7名の参加者が集合して平塚さんが作られた9kmのコースでの講習となった。

 

1周目は平塚さんが見本としてガイドされ、2周目からは参加者が3kmごとに交代してガイドをする実技講習となった。コースにはセンターラインがなく車が多い細い道、歩行者が多い住宅街、江津湖周辺のコーナーが多い道から東バイパスへの交差点での2段階右折し歩道走行、通学路となる中学校周辺、5差路の交差点で2段階右折し大型車両の多い国道3号線など、あえて複雑な状況で、お客さんを想定した7名の参加者をガイドするには瞬時に見極める判断力が必要で緊張の連続だった。

 

ただし、最後尾は平塚さんが担当され後方からの安全確認と追い越そうとする車両をさばいて渋滞を避けられていた。

 

先頭で案内するガイドは、安全走行をするための状況判断をしながら、的確な指示を最後尾の参加者まで「ハンドサインが見える位置」から伝えなければならない。また、周囲の車や追い越そうとする車のドライバーにも、「隊列となった我々の意思」をハンドサインに加えてアイコンタクト、顔の表情、ジェスチャーによって伝えて交錯する車をさばいていかなければならない。この2点の難易度はかなりのものだった。

 

住宅街では減速し、家から飛び出す子供や車両を避けるためやや右側を走行する。

 

歩道を走行する場合は右側、2段階右折の際の止まるところは交差点の対角線上でコンパクトにまとまる、交差点の停止線は安全であっても越えてはならない等々、知らないことが多くあった。なかでも先頭でガイドする位置は後ろから車がくれば左端になるが、通常は後続から見える左端のやや右側となる。路側帯の左を通常走る私には勇気がいる。

 

平塚さんの補佐をするため2番目を走りガイド役の先頭で走る人にアドバイスをした。

 

この時に役に立ったのがヘルメットの耳近くの紐に付けるインカムのSENA(セナ)だ。

平塚さんと私のヘルメットに装着し電源を入れるとそのままbluetoothで会話ができる。風切り音もなく小声でもちゃんと話すことができる便利なツールだ。

 

ブランケットに装着しているのはMeshインターコム。SENAの通信距離を延ばすアンテナみたいなものだがあまり詳しくないのでネットの説明によると、「網の目状の通信ネットワークを構築し、ネットワーク範囲内でお互いが複数の機器と同時につながることにより、常に最適の状態での通信が可能となる。そのため、グループ内でメンバーの一人が途中で抜けても、他の仲間は影響を受けることなく通信を続け、抜けたメンバーが再び通信圏内に入れば、自動的に参加できる。 最大通信距離は2kmで、6人以上が繋がれば、障害物や干渉物がない開けた場所、最大8kmまで通信が可能となる。」

実際使ってみると便利なもので装着したメンバーで会話することができる優れものだ。バッテリーの持ちがもう少し長いとサイクリング終了まで使えるが、今の使い方では昼食時に充電する必要があると思う。道の駅阿蘇で4台導入しサンプルとし別に10台くらい預かっている。

 

平塚吉光さんの「サイクルガイドアップデート講習」は、サイクリングガイドだけではなく、サイクリング時にリーダーとなる方にも活かせる走行技術だった。もちろん自分ひとりでサイクリングする際にも事故に遭う、もしくは事故を起こすリスクを回避する危険予測の教えでもあった。その学びは座学や広場ではなく、意図的に交通量の多く複雑に状況が変わる場所でなければ得られるものではないと感じた。サイクルガイドとしてアップデートしたと思うので明日から一緒に走る方々に2日間の体験を伝えていきたい。

 

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道の駅阿蘇(NPO法人ASO田園空間博物館)

TEL:0967-35-5077

HPhttp://www.aso-denku.jp/

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