コルナゴ部長こと中尾公一さんから最新レポートが届きました。
今回のコースは綺麗に咲き誇った「ミツマタ」と、阿蘇に春を告げる野焼きも済んだ牧野も含まれたコースで満喫されたようです。ご覧ください。
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冬季には氷瀑となる古閑の滝。その近くの斜面に咲き誇るミツマタの花と、野焼き直後で真っ黒に焼けた町古閑牧野、そしてミルクロード沿いに続く野焼きの跡をめぐり、扇谷展望所から蛇の道を望むという三つの景色をつなぐライドを3月29日に開催した。
ミツマタの群生地のことは、町古閑牧野のショウ君から以前から聞いていた。 ただ、急な坂をしばらく歩く必要があり、3ボルト規格のクリートを使うSPD-SLシューズでは厳しいだろうと思っていた。
ところが、下城さんの提案で、道の駅阿蘇のスタッフが 替えの靴を現地まで運んでくれることになり、 ついに訪ねることができた。古閑の滝の先へと足を踏み入れた瞬間、 そこに広がっていたのは、まるでジブリ作品のワンシーンのような異空間。 いや、記憶をたどると、むしろ無数のホタルが乱舞しているかのような光景だった。

この日参加されたのは、福岡や熊本、長崎からの6名のみなさんを私と下城で案内した。
道の駅阿蘇から古閑の滝駐車場までは8キロ弱。 そこで靴を履き替え、さらに先のトイレ横に自転車を置いて、ここからは15分ほど、約800mのセメント道を歩いて進むことになる。MTBや街乗り向けのSPDシューズならそのまま歩けるが SPD-SLではさすがに厳しい。 だからこそ、替えの靴を運んでもらえて本当にありがたかった。

古閑の滝駐車場に到着。靴を履き替えて、しばらく杉林の中を歩いていると、静まり返った森に、ふいにディーゼル列車の汽笛が響いた。 姿が見えないが、豊肥本線を走る列車が、これから願成就トンネルへ入っていくのだろう。 森の匂いと、そこに少し不似合いな汽笛の音。その組み合わせが、日常から遠ざかる気配を運んできた。

厳冬期には滝の水が凍りつき、氷瀑となって多くの観光客が訪れる古閑の滝。
この日はすっかり様変わりして、わずかな水が流れ落ちていた。

セメントの遊歩道から案内看板が示す未舗装の散策路へ降りると、 足元はしっとりと湿った木陰に変わり、空気がひんやりと肌に触れる。 この湿り気と柔らかな光が、ミツマタの群生に適した環境なのだろうか 、そんなことを考えながら進んでいく。すると黄色の花を咲かせたミツマタ1本、その横にも上にも見えてきた。

ここが群生地——ミツマタの林だった。
可愛らしい黄色い花があたり一面に咲き、柔らかく優しい香りが風に乗って漂っていた。風に揺れるたびに光の粒が舞うように見える。春の阿蘇にこんな世界が隠れていたのかと息をのんだ

私が最近見たミツマタといえば、七岳七福神ライドで訪ねた 高森・含蔵寺のミツマタだが、ここはそれよりも木が大きい。 生育環境がよほど良いのだろう。 参加者は、目線より高い位置に咲く花を夢中で撮影していた。

先に進むと、まるで「ここから鑑賞してください」と言わんばかりに 合板で作られたベンチが置かれていた。

そこから見上げると—— 淡い黄色の花が斜面を覆い尽くし、早春の陽光が谷間を包み込む、幻想的な光景が広がっていた。これが斜面を鮮やかに彩る黄色の群落か・・・
ミツマタは枝先が必ず三つに分かれ独特の樹形をつくる。 和紙の原料として知られ、 「破れにくさ」「独特の質感」「偽造のしにくさ」から いまも日本の紙幣に使われている植物だ。

そのミツマタの群生を眺めていると、ふいにホタルの乱舞を思い出した。
私が住む菊池市にはヒメボタルの名所がある。10年ほど前に、数千、数万のヒメボタルが点滅しながら飛び交う現場に遭遇した。そして、ある瞬間、森全体の光が同じリズムで点滅し始め、黄色い輝きと暗闇が交互に押し寄せ、全身に鳥肌が立ったことがあった。目の前に広がるミツマタの黄色い群落は、あの夜の光の記憶を呼び起こしてくれた。

もともと古閑の滝周辺にはミツマタはなかったという。 約20年前、地元住民でつくる「古閑の滝観光組合」の組合長さんが、 自宅の庭にあった数本をこの地へ移植したのが始まりだった。 日陰を好むミツマタは、木立の間をはいのぼるように広がり、 やがて斜面一帯を覆う群生へと育っていった。
しかし当時は足元の下草が深く、近づくことさえ難しかったらしい。 そこへ阿蘇市議会議員の中川文久さん(左端)が、 地主の了解を得て雑木を伐採し、散策できる道を整備。 そのおかげで、いまのように誰もが訪れられる名所になったと伺った。
ちょうどこの日、その作業に来られていた中川さんと 直接お会いすることができた。 現在は「あそミツマタプロジェクト」を立ち上げ、 阿蘇市内に点在するいくつかの群生地を調査し、 保全活動を進めておられるという。ミツマタの黄色い光景の裏には、 こうした地元の方々の静かな努力と想いが息づいていた。

ミツマタの群生地を後にし、駐車場でビンディングシューズに履き替えて箱石峠へ向かった。 峠までは、野焼きの後がくっきりと残る草原を眺めながら、 それぞれのペースで静かに上っていった。
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265号から町古閑牧野展望所を上っていると隣の牧野では野焼きをされており、この道の右側は野焼きした直後のようだった。

やがて町古閑牧野展望所に到着。
ここから見下ろす黒い草原は、まさに一年で最も美しい瞬間を迎えていた。

黒く焼けた大地は、陽の光を吸い込んで深い陰影をつくり、つい先ほどまでミツマタの柔らかな黄色に包まれていたのが嘘のよう。景色は一気に阿蘇の春を迎えていた。その静けさと迫力に、参加者は思わず足を止め、 それぞれが感嘆の声を漏らしていた。
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1週間前に野焼きされたばかりの真っ黒な町古閑牧野を抜けて、そのまま昼食予定の店へ向かったが店内は満席。 もう一軒はまさかの定休日、そこで4km先の道の駅波野へ向かうことにした。
国道57号は車こそ多いものの道はずっと下り基調。 黒い草原の余韻を背に受けながら、 ロードバイクの季節がようやく戻ってきた、あの軽やかなスピード感と風の気持ちよさを楽しみながら走った。

けっこう人数が多くてもここは大丈夫。それに注文して運ばれてくるまでが早い。支払いは現金のみ。ここからUBUYAMA PLACEの横を通り、ヒゴタイロードからミルク―ロードへ、そして絶景スポットの扇谷展望所に向かうが空いているか・・・

大観峰手前の扇谷展望所は牧野の私有地で普段は勝手に立ち入ることはできない。しかし、土日に限り牧野の管理を兼ねたキッチンカー「あそBo-郷」が営業しているときだけ、特別に中へ入ることができる。この日は運よくキッチンカーが来ており、無事に展望所へ足を踏み入れることができた。

ここから眺める阿蘇五岳はもちろん素晴らしいが、何より圧巻なのは 蛇の道を真下に見下ろせる という唯一無二の景観だ。谷筋をくねりながら走る白い道が、まるで大地に描かれた一本の線のように浮かび上がり、思わず息をのむほどの迫力がある。それがこれだ。

阿蘇谷側では、阿蘇五岳を真正面からゆったりと眺めることができる。 見えている景色そのものは大観峰と同じはずなのに、ここにはあの人混みのざわざわ感がまったくない。 風の音だけの静かな特等席だ。
「あそBo-郷」 では、コーヒーやジュース、おにぎり、サンドなどの軽食が揃っていて、補給にはちょうどいい。 温かいコーヒーを片手に阿蘇五岳と向き合える時間はここならではの贅沢だ。

展望所の先端には「危険」と書かれた看板が立っており、その先には階段が続いている。しかし、これは牧野を管理するための作業用の通路で、一般の立ち入りは固く禁止されている。

カルデラ壁に刻まれた曲がりくねった道は、
まるでラピュタ道のようだが、
牧野の私有地であり、
地元地銀が所有する「大観の森」に繋がっているので、
牧野ガイドの案内がなければ通行は禁止されている。
以前、通行許可をいただき阿蘇満喫グラベルライドで走った。
県道213号から頂上のミルクロードまで3.5km・平均勾配10%、
中腹の駐車場までは8%程度だが、
そこから先が激坂の連続、
ミルクロードまで1.7km・平均勾配は15%、
最大は27%・・・
湧き水に濡れているところもあり、
ダンシングならタイヤが空転してしまう。
シッティングで勾配15%以上を連続して走れるライダーだけが完走できる。
一度足を付けば激坂かつ、
狭い道なので再スタートは不可能。
でも見ていたら走りたくなってくる・・・

蛇の道を真下に見下ろしていたとき、私と同じように「ここを走ってみたい」と思った方が何人かいらしたようだ。あの白い線が谷筋をくねりながら伸びていく姿は、ただ眺めるだけでは終われない。自分の脚で、風を切りながら辿ってみたくなる道だ。ちょっと考えてみよう。

このあと、かぶと岩展望所でひと息つき、二重の峠を一気に下る。 そこから続く8m幅の農免道路では、ちょうど追い風が背中を押してくれた。 ペダルが軽くなり、景色が流れるスピードが自然と上がっていく。 あとは風に身を任せるだけでゴールへ運ばれていくような、実に爽快な区間だった。走りながらふと気づいた。 もう次回からはレーパンの季節だ。 風の温度も、日差しの強さも、確かに冬から春へと変わりつつある。その移ろいは、はっきりと感じた。

野焼きの後の道の中でも、牧野を抜ける峠道は見晴らしがよく、走り応えもひときわ大きい。 黒く焼けた大地の一本道はペダルを踏むたびに視界が開けていく。これは2021年、熊本地震のあとのラピュタをエアロスバルに乗って撮影した写真だ。100回以上走った懐かしい道だがもう復旧されることはない。

ラピュタにやや似ていて、今も通行できるのが小倉原牧野だ。
高森町の南阿蘇休暇村の裏手近くに上り口があり、212号(津留柳線)の矢津田御霊神社の横へと抜ける、ほとんど車が通らない静かな道で結ばれている。展望所は、つづら折りの峠道を上りきった頂上にあり、「高森サイクリストの聖地 天空展望所」という看板が目印だ。
ここからの眺めは、なかなか開放感がある。ただし、現在は野焼きが行われていないと聞いているため、このような黒い大地が広がる見晴らしの中を走ることは、今は難しいかもしれない。それでも、静けさと道の雰囲気は変わらず、走りたくなる牧野の峠道としての魅力はしっかり残っている。この道も私のライドのコースに久しぶりに取り入れたいと思っている。
