コルナゴ部長こと中尾公一さんレポート「町古閑牧野の野焼きと牧野ガイドスキルアップ講座」

コルナゴ部長こと中尾公一さんから最新レポートが届きました。
町古閑牧野の野焼きについてと、先日行われた牧野ガイドスキルアップ講座に参加された時のレポートです✨

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3月の阿蘇の山々は、野焼きが終わったばかりで一面が真っ黒になります。1年に一度この時期になると草原に火を入れ、草原に残る枯草を焼き払います。「野焼き」と呼ばれる阿蘇の伝統的な営みは、新しい草の芽生えを促し、草刈り作業をしやすくするために欠かせない作業です。また、野焼きによって草原が維持されることで、多くの生きものが暮らせる環境が守られています。

 

今年、町古閑牧野の野焼きが1日で終わらず、3月21日に再度行われると聞き、町古閑牧野で仕事をしている釜崎笙君、通称ショウ君に連絡し、見学できるエリアを教えてもらいプライベートで行くことにしました。

 

そのことを前日の19時過ぎにSNSで軽く発信したところ、阿蘇満喫ライドによく参加される鹿児島の福崎さんから「ぜひ同行したい」と連絡があり、急きょ二人で見学に行くことになりました。

 

私が案内する野焼きライドは、観光的な物珍しさでだけではなく、草原を守るために1000年以上続いてきた野焼きの厳しさを肌で感じてもらい、草原の恵みを活かしてきた先人の知恵こそ、世界に誇るべき自然と人間の共生のかたちであることを参加者に感じてもらいたと思っています。

 

道の駅阿蘇に9時30分集合。

そこから箱石峠を越えて町古閑牧野へ向かいました。

 

ショウ君からは、

「火入れは9時30分から10時頃になるだろう」

と聞いていましたが、峠を上りながらも煙がまったく見えません。

 

この日は風が少し強く、

「もしかして中止かもしれない…」

そんな不安が頭をよぎります。

 

冬季に標高800mの町古閑牧野から牛馬を移動させた麓の牧野は、

すでに野焼きが終わって真っ黒です。

福崎さんは、「いつもとは別世界ですね」と、

驚かれていました。

 

箱石峠の頂上付近に差しかかったとき、

まだ野焼きされていない牧野の斜面に何か動くのが見えました。

シカかイノシシかと思いましたが、近づくと人でした。

 

そこでは数名の方が、茅切り(かやきり)の作業をされていました。

足元は立っているのがやっとの急斜面。

その斜面で刈り取った茅を直径60cmほどの束にまとめ、

三カ所をひもでしっかり結び、

それを軽トラックまで運ぶ・・・

想像以上の重労働です。

 

しかも茅切りは、上質なものを得るため茅が十分に枯れるのを待つことになり、

作業できる期間は1月下旬から野焼きまでのわずかな時期に限られます。

天候にも左右されるため、まさに時間との勝負。

野焼きの「火」の裏側で、

こうした人の手による営みが草原を支えていることを改めて実感しました。

 

茅(かや)とは、ススキやヨシなどイネ科の植物の総称です。かつて日本の暮らしを支えていた茅葺き屋根は今では激減しましたが、文化財の修復などには毎年一定量の良質な茅、10万束が欠かせないそうです。その中でも阿蘇の茅は質の高さで全国的に知られています。そのため地元の方だけでなく、全国から茅葺職人が阿蘇に集まり、この短い時期に茅切りを行っています。

 

昨年、大阪・関西万博を訪れた際、隈研吾氏が設計したパビリオンが「茅」で造られているのを見て驚きました。茅は古い建材というイメージが強いですが、現代建築の素材としても活用できるとことが今後の阿蘇の草原の維持に繋がればと思いました。

 

この日は絶好のサイクリング日和でした。

そして、箱石峠から広がる見晴らしの良さに、

福崎さんと何度も「今日は本当に来てよかったですね」と話しました。

阿蘇の野焼きは、火だけが主役ではありません。

このようにその前後にある景色までもが特別な体験をつくってくれます。

 

1週間前に野焼きが行われた町古閑牧野展望所付近は、一面が真っ黒に焼け、まさに一年でいちばん美しい阿蘇の景色が広がっていました。

眩しさがまったくないのは、黒い大地が陽の光を吸い込み、まるで野球選手が目の下に塗る アイブラックと同じ効果のようです。光を吸収した黒が、景色全体をくっきりと際立たせてくれます。

 

展望所から走り出すと風が吹き出しました。

すると草原を覆う黒い灰が竜巻のように空へ舞い上がりました。山の風はこのように複雑な動きをしているということがわかります。以前、エアロスバルで複雑な気流が発生する立野峡谷上空を飛んだ時の体験がこういうことなんだと思いました。

 

コルナゴ部長の阿蘇天空の旅 空から眺める阿蘇ライド

 

しばらく走ると煙が見えてきました。

 

ショウ君に教えてもらった場所に着くと、町古閑牧野の市原組合長さん、そしてショウ君がすでに野焼きをされており、まずは見学できるエリアを確認しました。

そこには野焼きボランティアの方もいて、みなさん毎年参加されているようで、熊本県内だけでなく県外からも来られているようでした。

その中に、鹿児島から参加されている方がおられて、同じ鹿児島県出身の福崎さんと話が盛り上がっていました。

 

しばらくすると火が丘を駆けのぼり始めました。

同時にバリバリッと、まるで地鳴りのような轟音が響き、

炎は竜巻のようにうねりながら10mほどの高さにもなります。

 

野焼きボランティアの方々は、牧野組合員の指示に従い、延焼を食い止める作業にあたっていました。手には火消棒(ひけしぼう)を持ち、扇型の先端で輪地(防火帯)など草が短いところで火が弱まったら上から叩いて消します。背中にジェットシューター(背負い式消火水のう)を背負い必要な場所に素早く水を噴射していきます。

 

私たちはかなり離れた場所にいたにもかかわらず、

熱気が肌を刺すように伝わってきました。

風にあおられた燃えカスが宙を舞い、

まともに目を開けていられないほどです。

 

炎が生き物のように走り抜けて黒い大地が広がっていきます。

その迫力に、野焼きを初めて見る福崎さんは驚きの連続でした。

 

 

午前の部が終わり、野焼きをされている皆さんは昼食の時間に入りました。私たちは7km先の「ドライブイン峠」まで足を延ばして昼食をとることにしましたが、店内はかなり混み合っていて、思いのほか時間がかかってしまいました。

 

戻ってきたときには、見学できるエリアの野焼きはすでに終盤。それでも、炎が草原を焼き進む姿は迫力満点で、福崎さんには特別な体験だったと思います。

 

来た道を戻る途中、思いがけない光景が待っていました。道の向こうでは、炎が草原を焼き尽くしていて、その横を自転車で進むという、まるで映画のセットの中のようでした。顔に、手に伝わってくる炎、燃え広がる轟音、炎が興す熱風、そこを逃げ惑う数匹のウサギ、空には攻撃ヘリのように猛禽類がホバリングしなら焼け野原のカヤネズミを狙う、久しぶりにワルキューレが聞こえてきそうでした。

 

最後は町古閑牧野展望所から箱石峠を下って野焼き見学ライドを終えました。

自宅に帰り一息入れると、猛火と煤の熱風を浴び続けた証拠に、鼻をかんだらティッシュが真っ黒でした。耳の中も恐らく真っ黒だろうと思いましたが、我が家のめん棒はすべて黒、まあしかし、すさまじき野焼きの記憶はしばらく残り続けるでしょう。それにしてよく焼けた。見渡す限り真っ黒になった。これであたらしい草原に生まれかわることでしょう。

 

阿蘇くじゅう国立公園地域協議会主催・ASO田園空間博物館共催による「千年の草原を活用した持続可能な観光ガイドライン」という環境省阿蘇くじゅう国立公園管理事務所による阿蘇の観光事業者向け講習会に参加してきました。

 

プログラムは3つあり、東海大学小林寛子客員教授による「ガイディング技術について」は、いつもながら小林先生のトークが炸裂して、外国人が多い阿蘇で活動する様々なガイドにとって、わかりやすいプロガイド養成を目指す講座でした。また、ショウ君がモデルなっている教本「わかりやすく伝えるガイディング」は永久保存版です。

 

熊本県阿蘇家畜衛生保健所による「口蹄疫対策等の注意喚起」は、阿蘇観光になくてはならない放牧の牛馬を守るための知識とガイドができる行動が私個人にとって収穫でした。極めて感染力が強い口蹄疫の発生において、日本と台湾以外のアジア諸国でこの数年でも度々発生しており、外国人観光客が牧野に立ち入ったり、放牧の牛馬に触れるたりすることが、放牧畜産農家にとって最も神経を使うことになっているのだと思いました。

 

この日の講習会で個人的に惹かれたのは、「レジェンド牧野との座談会」です。新宮牧野組合 湯浅陸雄さん86歳の当時の牧野のことや、農業・生活事情についてのお話は、インタビュアーの木部直美さんの巧みなサポートもあり貴重で思いがけない内容でした。

 

80年前、1940年代の阿蘇の農家には、農耕用の牛馬がいて家族同様に大切にしていたそうです。そこで質問タイムには、「牛や馬に名前を付けられたと思いますがどんな名前でしたか」と尋ねました。湯浅さんは少し和らいだ表情で『「サツキ」とか「スミレ」など花の名前でした』と答えられました。度重なる中岳噴火による降灰など阿蘇における農業の厳しさの反面、農耕の友に対する温もりを求める片隅にふれたように思いました。

 

湯浅さんは数冊の本も書かれており、この日資料としていただいた「語りつぐ阿蘇の草原」には貴重な情報が多くて、私が阿蘇で仕事をするようになった時、図書館で牧野について調べたことがてんこ盛りにまとめられている内容でした。

 

多分こんな時代のお話でした。

 

秋の彼岸を過ぎると、各戸に分配された草刈り場でこのような大鎌で刈り干し切りが始まったそうです。グラインダーなどない時代、鎌の切れ味を良くするための砥石は貴重だったそうで「嫁を貸しても砥石は貸すな」という一節は、この写真をみればなるほどとうなずけました。

 

この講座には牧野ガイドとして6名の参加がありました。

よしたまさん、上野さん、堤さんは急用で欠席でしたが、「阿蘇のサイクリングは楽しいよ」という今年で7年目を迎える「阿蘇満喫ライド」の参加者が、いつの間にか案内する側の牧野ガイドにステップアップされてうれしい限りです。これからも私たちガイド仲間を増やせるよう阿蘇サイクリングの魅力を発信する活動を継続したいと思っています。

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