コルナゴ部長こと中尾公一さんから最新レポートが届きました。
熊本、佐賀、長崎、山口の4県で実施したサイクリングコース試走のレポートです。
地域の魅力を再発見できるのもサイクリングの醍醐味ですね✨ご覧ください~
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一昨年より阿蘇地域外からガイド業務やサイクリングコースの造成を受託する機会が増えました。これは2019年6月に開始した「阿蘇満喫ライド」を通じて、九州各地のサイクリストと交流が深まり、そのネットワークを基に依頼地域の方との連携により可能になりました。
その代表的な事例として、緑川流域4町のサイクリングコース造成事業が挙げられます。この事業では、地元サイクリスト2名とガイド仲間の協力を得て複数のコース案を作成し、実走による検証を実施しながら完成させました。完成後には写真の阿蘇満喫ライドの遠征開催として当該コースを利用し、参加者に実走してもらうことで最終確認を行いました。
これらの取り組みを進める上で活かされたのは、下城駅長のもと「道の駅阿蘇」を起点として広がる広域的なサイクリングネットワークの存在です。私もこれまで地域紹介やサイクリングガイドとして培ってきた活動により新しい展開につながりつつあります。
現在は九州・山口各県におけるインバウンドを含む旅行者を対象としたサイクリングコース造成に道の駅阿蘇が取り組むなど活動範囲はさらに広がっています。

山口、福岡、長崎、佐賀、大分、宮崎、鹿児島、熊本のコースは、各県のサイクリストにコースを提案してもらい確認が必要な場合は下城さんと私が現地に赴きます。現在、熊本を含む4県に行きましたので試走を通して見えてきたこと、得られた気づきを紹介しましょう。

長崎県は島原市の島原城がスタート地点になりました。
島原城で迎えてくれた「島原七万石武将隊」が素晴らしく感動しました。武者言葉での城の説明や、写真も快く応じてくれる温かいおもてなしは、外国人にも特別な体験として島原の印象をグッとあげてサイクリングをスタートできると思いました。
ところが後日、2013年に結成された彼らが今年の3月29日で活動を終えると知りました。築城400年武将隊PR事業の完了に伴い区切りを付けるそうですが、地域の魅力を伝える象徴的なチームだっただけに残念で仕方なく、個人的には週末だけでもサプライズのもてなしに期待したいところです。

サイクリングには「風を切る爽快感」や「美しい景色」といった自然の楽しさだけではなく、「地域の美味しい食やスイーツに出会う楽しみ」も自転車旅の満足度を高めてくれる要素です。
そこで立ち寄り先に選んだのは、白玉粉で作った小さな団子を特製の蜜をかけた「かんざらし」で人気店の「銀水」を訪ねました。

銀水に行くまでの路地裏の細い道がとても風情があり旅行者に喜ばれそうでした。サイクリングコースなのでこれはとても大切な要素です。かんざらしは口の中でとろけそうな上品な甘さと喉越しの良さはサイクリングで疲れた身体を癒してくれそうです。このシンプルなスイーツは、江戸時代から続く伝統食として『100年フード』に認定されており、地域の文化そのものを味わえる一品でした

ランチは島原いえば「具雑煮」ですが、寒かったことと長崎の冠がある「ちゃんぽん」を選びました。おやつは、そら豆を油で揚げた「チェリー豆」です。個人的にも大好きで創業大正三年の「藤田チェリー豆総本店」がコース近くにあったので「おやつタイム」と土産にも買いました。

立ち寄った施設としては、島原復興アリーナにあって普賢岳を背景にした「サムライブルー龍馬像」、雲仙普賢岳噴火による土石流で被災した9棟の被災家屋を保存展示してある「「土石流被災家屋保存公園」、新町付近の湧水の水路に1500匹の鯉を放流している「鯉の泳ぐまち」は100mくらいなので押し歩きにちょうどいい感じでした。残念ながらこの日は小雨になったので自転車でのコース確認は早めに切り上げて次に試走する佐賀へ移動しました。

佐賀県を担当してもらっているは、サイクルロードレース元プロ選手の牧瀬つばささん(右)です。この日、福岡を担当されている久木原慶さん(中央)も同行してもらいました。佐賀県といえば有田焼、ということで有田町を巡るコースを提案されました。
ここは有田焼の祖である李参平を「陶祖」として尊重し祭神とする陶山神社(すえやまじんじゃ)。なんと明神鳥居は磁器製、狛犬も大水瓶も磁器製で神社の周囲に設ける垣根は日本一の磁器製玉垣という400年以上続く日本の磁器文化の出発点となった有田らしい神社です。


もうひとつ陶山神社の特徴は、この階段で上がってすぐJR佐世保線の踏切があり・・・

階段を上がるとそこは踏切になり、その先からが陶山神社の境内になるので驚きです。

境内からは「ハウステンボス号」や、

以前来た時には「ななつ星in九州」も大迫力で見ることができました。

サイクリングで押さえたいのは、登り窯を築くために用いた耐火レンガ(トンバイ)の廃材や、使い捨ての窯道具を赤土で塗り固め作った「トンバイ塀」のある裏通りはフォトスポットに最適です。

有田の古い街並みにモールトンのミニベロがお似合いですね。このような写真を撮りたくなる自転車がレンタサイクルにあればと思います。

陶器店が並ぶ碗坂通りや皿山通り、五区楽通り、有田駅前やきもの散歩道もいいですが、有田駅から2kmちょっとの小高い丘の 上にあり、22軒の陶磁器専門店が並び雨の日でも楽しめる複合施設「アリタセラ / Arita Será」もおすすめです。
「MARUBUN SHOP & BAKERY CAFÉ」は素敵な食卓を提案するショップでした。焼き立てのパンは、久木原さんお気に入りの「抹茶のブリオッシュ」や、豆乳に葛を加えて甘いごま醤油で食べる「ごどうふ」は有田名物ですが、そのごどうふにチーズとバジルを合わせた「有田名物ごどうふのパイ」、それに「有田豚の厚切りボローニャピザ」というのも次回は是非食べてみようと思いました。
ブランチのあとは有田焼の伝統を踏襲しながらもこれまでとは異なるデザインアプローチを試みる「百田陶園」(写真)が印象的でした。店内も未来に寄り添う雰囲気でカフェでは、魅力的なデザインのカップを選んでコーヒーが楽しめます。私は思わず冷酒用の器を買いましたが楽しい夜の友になっています。

山口県長門市のサイクリングコースは、ガイド仲間で長門市に詳しい清田あづささんの友人の方に提案してもらい、清田さんと3人で試走にいきました。ここでの収穫は、2人乗りの「タンデム自転車」の楽しさでした。これについてはまた後で詳しく紹介します。

熊本から長門市まではなかなかの距離だったのでサイクリングの前に昼食をとりました。山口といえば「瓦そば」でしょう、地元の方から紹介してもらった長門湯本温泉の古民家を改装した店内の雰囲気も素敵な「瓦そば柳屋」へ行きました。

実は瓦そばは初めての体験でした。想像以上に大きい瓦、石州瓦だそうですが、熱々のそば、盛り付けされた牛肉、錦糸卵、海苔、ネギといった具材、レモンともみじおろしの薬味が見た目も美しく、熱した瓦の上で広がる芳ばしい香りで食欲が一気に増しました。
先ずはそのまま汁に浸して食べましたがこれがまた美味しい。その後はレモンや紅葉おろしで味変したり、焦げ目がついてきたところを頂いたりといろいろ楽しめます。3人前には多いかもと思っていましたが、あっと言う間に完食しました。

試走は「道の駅センザキッチン」にある観光案内所「YUKUTE」のレンタサイクルで走ります。受け付けには予約していた私と下城さんのクロスバイクと清田さんのE-bikeが並んでいました。しかし、店の前に置かれていたタンデム自転車に惹かれてクロスバイク1台とダンデム車に2人乗って走ることにしました。

KHSのフォールディングタイプのタンデム車のバッグは、カゴでないのがお洒落だし荷物を見られないで乗せられるのが便利です。3人とも初めてのタンデム体験ですので、前に乗車(キャプテンまたはパイロット)する私と下城さんは駐車場で練習しましたがすぐに慣れました。

サイクリングをスタートする前に「YUKUTE」に隣接した青海島観光船のりば(青海島観光汽船)
には、色鮮やかな観光船があるので写真スポットにもいいでしょう。それに広いデッキで景色を眺めてから出発すると気持ちが落ち着きます。道の駅センザキッチンで飲み物や、仙崎ならではの軽食を購入して行くのもおすすめです。

コースは日本海の荒波を受けて浸食地形となった奇岩の並び立つ「海上アルプス」と称される青海島までの往復になります。ビューポイントには自転車を降りて短いコースのハイキングになりますが、履物はビンディングシューズではなくスニーカーなので気になったところに気軽に行くことができます。

観光地での駐輪は不安になりがちですが、こちらのレンタサイクルには、ボトルゲージのツールボックスにチェーンロックが装備されているので安心して散策が楽しめます。

「YUKUTE」を出発したら、街中を通って「さわやか海岸」から海風を感じながらゆっくり「青海大橋」を渡る時間が気持ち良かったですね。特に2人で力を合わせて走行ができるタンデム車は、通常だと自転車で走行中に話すことは片言しかできませんが、この自転車だと目に映る景色の感想を普通に会話しながら走れるところが発見でした。

青海島自然研究路(メモリアルロード)樋着。「海上アルプス」に入ります。海岸線の地形は変化が大きく、トンネル状の岩、切り立った断崖など絶景が連続します。ここに先程の観光遊覧船で1時間程度で来ることができるので、船が岩の間を抜ける瞬間や、波のうねりを感じる場面はスリルもありそうです。ゴールしてから海上から見る青海島というのも興味津々でした。

青海島から来た道を帰りますが景色が違うので問題ありません。
街中に入って仙崎出身の幻の童謡詩人と呼ばれた金子みすゞ記念館に立ち寄りました。先ほどまでの荒々しい海風や奇岩の迫力とは対照的に、館内の静けさのギャップが心地よく、気分がリセットされます。

けっこうゆっくりしたので「YUKUTE」には利用時間ギリギリにゴールしました。今回のサイクリングコースは、青海島に行くのでひとつだけ峠はありましたが満足できるものでした。街中や海岸線のポタリングも良かったし、時間があったらカフェに立ち寄って地元の方と話ができたらもっと内容が濃くなると思いました。

近くのサイクリングでおすすめの立ち寄りスポットは、絶景島と呼ばれる角島大橋や、日本海のコバルトブルーと123基の朱色の鳥居の元乃隅神社、それに西日本で最大のMTBレース「汗汗フェスタ」が開催される千畳敷は車で行きましたが、対象とするのが外国人を含む旅行者なので、距離や上り坂を考えるとレンタカー等での立ち寄りになると思います。

タンデム自転車は、2人で息を合わせて運転することが大きな魅力です。特に、後部に座る同乗者はハンドル操作が必要ないため、視覚障がい者や高齢者の方もタンデム自転車に乗り、一緒に自転車での走行を楽しむことができ、ユニバーサルスポーツのひとつとされています。
また、タンデム自転車は、スポーツとして自転車競技の「タンデムスプリント」という種目でも用いられており、1972年ミュンヘンオリンピックまでは、オリンピック実施種目として扱われていました。このように、タンデム自転車は、レクリエーションから移動手段、競技まで幅広い目的で楽しむことができます。
個人的に今回の最大の収穫は、初めて体験したタンデム自転車の楽しさでした。普通の自転車では味わえない魅力があり、会話をしながら同じ景色を共有できることが何より新鮮です。走りながらその場の感想を自然に言い合えるのは、タンデムならではの特権だと感じました。さらに、二人で息を合わせてペダルを踏み、バランスを取って進む一体感も大きな魅力です。

前職で阿蘇内牧の旅館にいた頃、欧州からのカップルがタンデムで旅している姿が印象に残っています。日本では長く「危険」という理由で一般公道のタンデム走行が制限されてきましたが、実際には世界の多くの国で普通に走られていて、旅行者からすると「なぜ日本だけ?」という状況が続いていました。
熊本は2020年4月1日解禁、そして全国最後の東京都が2023年7月に解禁。これでようやく日本全国でタンデム車での公道走行が可能になりました。写真は2018年にイギリスのオックスフォードから来たご夫妻ですが、熊本を走っていたということは当時のルールでは本来アウト。旅行者は当然「世界標準」で考えるので、禁止されているとは思いもしなかったでしょうし、制度の遅れを象徴するようなエピソードです。

ジロ・デ・イタリア観戦で北イタリアを訪れた際には、峠道でE-bikeのタンデム車を何台も目にしました。自転車文化が根付いた地域では、タンデムというスタイルが自然に受け入れられ、楽しみ方にも長い歴史があるのだと実感しました。それに2人で漕ぐから長距離でも疲れにくい、会話しながら旅ができる、荷物を分担しやすい、カップルや夫婦旅と相性が良い、そのような理由で海外では旅の定番のようでした。

九州・山口各県のサイクリングコースは、インバウンドを含む旅行者が利用しやすいよう、最寄り駅から近く、レンタサイクルを起点に出発できることを前提にしています。旅行者がサイクリングをしたくなる動機は、魅力的なコース設定だけでなく、どんなタイプの自転車に乗れるかという点も大きいのではないかと今回の試走で感じました。
今回何度も触れたタンデム車の楽しさはもちろんですが、有田の陶山神社で久木原さんが乗っていたミニベロ(小径車)のように、見た目の個性がある自転車は写真映えが抜群です。ママチャリや一般的なクロスバイクとは雰囲気がまったく異なり、荷物を入れるカゴもバッグタイプだと一気にお洒落になります。
これからのレンタサイクルを扱う施設は、『思わず写真を撮りたくなる自転車』を数台でも揃えておくことで、旅行者の心をつかむ強いアピールになるのではないかと思います。サイクリングそのものが旅の思い出として残りやすくなり、地域の魅力発信にもつながるはずです。旅先で出会う一台の自転車が、その土地の思い出を鮮やかにしてくれます。そんな体験を提供できる環境づくりがこれからますます重要になっていくでしょう。
最後に下城さんと清田さんのタンデム車に乗っている動画で終わりします。
