コルナゴ部長こと中尾公一さんから最新レポートが届きました。
前回に引き続き、外国人の方をご案内したレポートで、今回は韓国からのお客様をご案内しています。ご覧ください。
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韓国のサイクリストが航空機で快適に福岡県に自転車を持ち込むための新たなサービスとして、航空輸送用自転車ケース「ラウンデル・グリーンパックサービス」が今年の3月から日本で初めて福岡空港で利用できるようになった。そこでこのサービスを韓国マーケットに情報発信するため、韓国のサイクルインフルエンサー4名と通訳を兼ねてラウンデル・グリーンパックサービスを提供するヴィルトゥカンパニー代表のヨンさんが福岡県から招かれて2泊3日で福岡と阿蘇を案内してきた。

韓国内の空港で提供している輪行支援サービス「ラウンデル・グリーンパックサービス」で使用するのがこの折り畳み式ケースだ。出発する空港でケースを貸し出し、到着空港でケースを畳んだ状態で預かるサービスになり、自転車の収納は前輪を取り外すだけなので初心者でも可能だ。

福岡空港に着いたら手荷物一時預かりや、当日配送サービスのカゴパスカウンターに箱を戻して、前輪を着けて用意されているフロアポンプでタイヤに空気を入れたらすぐに走行可能。
携帯用の輪行袋に入れるとタクシーや公共の交通機関で移動することができるし、当日、博多エリア、天神エリア、中洲エリアにホテルを取っていれば、カゴパスカウンターでスーツケースなど15時までに預けるとその日に配送が可能だ。

しかし、一便利なのはレンタカーやサポートカーを手配されていたら時間の節約になるだろう。今回は自走で天神まで移動して西鉄のサイクルトレインで柳川へ行き、荷物は車で八女のホテルという想定だった。

コースは福岡県柳川市と八女市があらかじめ指定されていたので、そこを繋いで韓国のサイクリストに好まれそうなところを試走してコースを考えた。その際に柳川と八女については地元で自転車仲間のケイさんに手伝ってもらい当日も一緒にガイドしてもらった。
前回の中国人女性グループを大分の野崎さんと別府から阿蘇まで案内したが、このように自転車仲間と連携することにより、阿蘇だけでなく九州各地の地元のサイクリストだけが知るコースや立ち寄りスポットを案内することができる。特に今後は滞在時間の長い欧米のサイクリストのニーズとなる広域なプランを提供できるようになるだろう。

今回のガイドは韓国のみなさんを西鉄柳川駅で迎えるところから始まる。簡単な自己紹介のあとサイクリングをスタートして柳川駅から街中を少し走ると、すぐに柳川の「川下り」が見えて来てみなさんから歓声が上がる。

柳川の川下りは「お堀巡り」とも呼ばれ、「どんこ舟」という舟に乗り水路「掘割」を巡るものだ。船頭さんの舟歌、しだれ柳や季節の花々、白壁の美しい街並みが水面に映る風情ある景観をサイクリングや押し歩きで楽しんでもらった。柳川のことはみなさんまったくご存知なくサイクリングエリアとして大いにアピールできたと思った。

昼食は有明海の幸を提供する「夜明茶屋」を選んだ。ここは筑後市の自転車仲間の高巣さんの友人がオーナーであり紹介してもらった。

料理の説明には社長がお越しになり面白おかしく説明していただいた。フランス料理の高級食材、シタビラメをこちらでは「クツゾコ」といって上品な白身を活かした煮付けが定番だ。ほかにもイソギンチャクの味噌煮など珍しい料理に興味を示されていた。韓国の方のサイクルジャージへの着替えはお客が多い中別室を用意してもらい助かった。

この店は魚屋でもあるので好みの魚や貝類を選んで調理してもらって食べることも出来る。釜山のチャガルチ市場の雰囲気に似た有明の幸にこだわった店なので、そのような注文も面白いが、今回はスタッフと合わせて総勢11名と多かったので定食にされていた。

柳川市からは筑後市、八女・福島の街並みを眺めながら夕景の八女大茶園がこの日のフィナーレとなる。よって17時15分の日没前の16時30分には大茶園到着を目指したいが、天神からサイクルトレインに1便乗り遅れ30分以上予定時間を遅れているので少し先を急ぎたいと相談すると、とにかく走りたくて仕方ない様子だったのでケイさんの先導に合わせて走られた。

江戸時代から愛飲さえているみやま市の日本有数の炭酸含有量の天然水の長田鉱泉場に立ち寄った。レトロな小屋に入って炭酸湧水を飲まれると驚き様子でボトルの水と入れ替えられた。自転車乗りにとって水は走行中に一番大事なものだから珍しい炭酸水はとても喜ばれた。

矢部川沿いの車の少ない道はサイクリングに最適、矢部川の水の美しさに感激されていた。そして、この道沿いにある竈門神社に立ち寄った。

事前に確認したら「鬼滅の刃」のことをよくご存知だった。

アニメは海外で想像以上の人気だ。みなさんからは是非とも「進撃の巨人」の日田市に立ち寄りたいとリクエストがあり、3日目の午後から車移動で見学に行かれる。その際に作者の諫山創さんが高校生時代にアルバイトしていた想夫恋大山店に行かれることをお勧めした。

熊本は「ONE PIECE」の作者の尾田栄一郎氏が熊本出身で、県内に10体造られている「麦わらの一味の銅像」を見るために世界中のファンが熊本に来られている。そしてこの地は「鬼滅の刃」の聖地といわれている。作者は名前も、性別も、顔も非公開となっているが、出身は福岡県であると公式に発表されている。
しかし、具体的な市町村名は明らかにされていないものの、いろんな推測の一つとして一緒に案内しているケイさんは作品中の描写からこの近くの出身ではないかと言われている。全国どこでも同じように見える切り口のサイクルツーリズムのなかで日本が誇るアニメを活かさない手はない。

こちらはアメリカ人の絵馬

インドからも・・・

八女福島商屋町はサイクリングで見て回った。

時間的に立ち寄りは出来なかったが、

この日の宿が「NIPPONIA HOTEL 八女 福島 商家町」なのでそこでゆっくり満喫していただこう。

八女大茶園に入るといい時間帯になっていた。すると歓声が聞こえ動画撮影のため独り言のようにコメント言いながら走られた。

このタイミングを逃すまいとみなさん忙しい



展望台に着くとKeiさんがサプライズで玉露を仕込んで来られていた。粋な計らいだ。八女大茶園で夕陽を見ながらお茶を一服という体験をしてもらった。
陽が傾いてきた。
すると西の空がだんだんとオレンジ色の濃淡になってきた、
やがて夕陽は真紅に輝き、
八女大茶園の先の有明海に沈んでいった。
感動的なシーンだった。
絶好のタイミングで劇的な夕陽を見せることができて私とケイさんは安心した。

NIPPONIA HOTELには予定より少し早く到着したので客室を見学させてもらった。旧喜多屋別邸のフロントとレストランがあるKITAYA BETTEI棟の客室は2部屋、ここには女性2名が宿泊された。男性3名は少し離れた旧大坪茶屋OTUBO TYAHO棟。

伝統的な建物と現代的な快適に過ごせる客室は、昔ながらの佇まいや趣向はそのままにリノベーションされて何十年も前からあるような雰囲気が漂っていた。

大満足のご様子、夕食はイタリアンだったそうだ。

2日目は8時集合で18km先の星野村の木屋芳友園を目指した。
八女福島商屋町からバルビゾンの道を走った。バルビゾンの道とは、福岡県の矢部線の廃線跡に一般公募で名付けられた9kmの道で、フランス中北部にあるフランスのバルビゾン村に由来する。この村はミレーやコローなどの著名な画家たちが活動した場所であり、彼らの作品は「バルビゾン派」として知られている。
このバルビゾンの村に1921(大正10)年、1人の画家が絵を学ぶために訪れ、数年間バルビゾン村で過ごした後、1931(昭和6)年にあるきっかけで八女市を訪れる。そこで見た八女市とバルビゾンの風景がそっくりであったことから「東洋のバルビゾン」と名付け、八女市に自宅とアトリエを築いて過ごした。

木屋芳友園のお茶の販売と試飲、それに今回予約していたティステングルームに併設されたカフェのような一室がある茶房星水庵には、予定より早く到着し玄関前の打ち水で迎えられた。

木屋芳友園の代表で日本茶鑑定士の木屋康彦さんは、自転車仲間でもあり今まで多くのサイクリストに農水省の「地理的表示保護制度」に登録された八女伝統本玉露の体験をしてもらっていた。今回は韓国のみなさんにも是非味わって欲しいと思い、このあと星野村から阿蘇へは車で移動することにして、90分間八女茶を愉しんでもらいながらお茶の真髄を知ってもらおうと木屋さんにお願いしてこの日を迎えた。

木屋さんは2017年、八女伝統本玉露と八女茶の魅力を伝えるため、カリフォルニアのレストラン「single thread」との料理ペアリングにニューヨークを訪問されている。その年の12月、ついにフレンチの巨匠、ジョエル・ロブションに八女伝統本玉露に感動してもらい、翌年にはニューヨークのロブションのレストランで八女茶とともに料理を味わうペアリングイベントが実現し、八女伝統本玉露は世界のフランス料理を牽引してきた「神様」が生涯最後に認めた食材になった。

ということで茶房星水庵はこのような造りになり、磁器や陶器だけでなくリーデルのワイングラスでお茶を提供されている。ここにはロブションJr、リーデルの代表、クリスタル界のオートクチュールと呼ばれるラリックジャパンの代表、それに海外レストランから買い付けに来られる商談の場でもある。

木屋さんの横には通訳を兼ねてヨンに座っていただき、玉手箱を開けたようなお茶の話を巧みに訳された。するとみなさんが木屋さんの話に引き込まれて質問も幾つかされていた。

「みなさん、自転車で来られたので冷たいものから始めましょう」と、木屋さんの祖父の名を冠した茶葉「茶ノ匠 芳友」と星野の水によりフィルターインボトルで抽出された水出しの煎茶はリーデルのリースリングタイプの中でも一番薄いグラスに注がれる。木屋さんは口当たり重視されて、ほかのタイプのグラスも磁気や陶器も器の口縁が薄いタイプを選ばれている。
煎茶の味はというと、気品ある爽やかなお茶の旨味はこれぞ日本、会話もはずむし食事しながらの飲み物に最適だ。木屋さんが韓国のみなさんに感想を聞かれてそれぞれ話されていたが、初めてのこのようなスタイルのお茶体験に驚きと感動の様子だった。

そして八女伝統本玉露は、ふた付きの茶わんに茶葉を入れ、ぬるま湯を少量注いで味わう。「しずく茶」、すすり茶ともいわれて、ロブションが「感動だ、世界展開する際には協力する」と太鼓判を押したお茶だ。

有田の磁器に数滴濃縮された香りと味の圧倒的な存在感はまさに奇跡のような逸品。

ニ煎目にはマイルドな美味しさになり五煎目まで味わえる。

三煎目は八女の菓子職人が作ったガトーショコラを合わせられた。見事な取り合わせだった。外国の方にはこのようなサプライズがインパクトある。以前、体験した際には地元の上陽饅頭にフキノトウ味噌を合わせたり、究極はイタリアの代表的なチーズのゴルゴンゾーラだった。木屋さんが試行錯誤の結果、ブルーチーズの独特の風味と塩味が、厚めの少し甘味がある皮とお茶の香りがぴったりと合った。

最後は茶葉も頂く。フランスの岩塩とオリーブオイルをかけると不思議な美味しさになる。

木屋さんのお茶体験は八女茶のフルコースが楽しめる。リーデルのワイングラスを使って海外でも入手できるペットボトルの水出し煎茶や、ペリエで割るとスパークリングワインのようになり、東京・恵比寿のロブションのフランス料理店で日本茶として初めてメニュの一つに採用された。
八女伝統本玉露は、濃縮した旨味をすすり茶で一滴の味わいと、最後の焙じ茶は、丸い陶器の香貴の湯のみが手に馴染み、香りが引き立つ癒しの一杯として心を静めてくれた。そのような様々なお茶の飲み方を流儀も作法もなく楽しむことが出来て韓国のみなさんも満足されたようだ。

ここから阿蘇には車移動になりケイさんの案内は終わった。少しの時間だったが一緒に走って友だち気分になれたようだ。今後の交流はSNSを通じて続けられることだろう。

昼食は南小国の知人に紹介してもらった熊本産豚肉料理専門店の「豚皇」。

ジューシな肉厚のロースカツは豚肉の旨味が軽やかな衣に包まれていた。豚肉の美味しさはモッチリした脂肪身だと思う。微かな甘みと淡白うま味が正肉身の重厚なうま味とバランスをとりながら、炊き立ての土釜ご飯に合わせて食べるものだから堪らない。韓国のみなさんも満足されていたいに違いない。

阿蘇でのサイクリングはこの日の宿となる「エル・パティオ牧場」からスタートした。
ミルクロードのアップダウンから57号に一旦出て、町古閑牧野道に入って農業倉庫で事前に用意していたE-MTBに乗り換えて牧野ライドを体験してもらった。

16時から牧野に入ると夕陽になりつつある光がススキを黄金色に照らして見事な情景になっていった。みなさんは牧野の坂を上ったり下りたり、子供のように駆けずり回られえていた。



ベストな時間帯の牧野ライド体験になった。町古閑牧野展望所で今回2度目の夕景を鑑賞して、ここから車でコンビニに寄って帰る予定だったが、お一人箱石峠のダウンヒルを希望されたので57号までお付き合いした。この時間帯の箱石峠は初めてだったが空気感がしっとしていい最高の気分だった。

エル・パティオ牧場の夕食はBBQ。
客室はリニューアルされて快適だった。私は新館だったが超豪華で、何よりもベッドルーム、テラス、リビング、そして浴室からも大草原が一望できて、好きなところから朝陽を眺められるのはここだけの魅力だろう。ただし、私たちは大観峰まで自走してそこで日の出を鑑賞するのでちょっともったいなかった。

3日目は6時集合で9.4km先の大観峰を目指した。
想像した標高800m、900mのコースは思ったほど寒くなく、走り始めは真っ暗だったが、東の空がだんだんと明るくなっていく久し振りに体験にワクワク感がたまらなかった。
走りながら阿蘇谷が見えてくると黒い東の空が紺色になった。オレンジの光が射すと山が輪郭を現わし、阿蘇五岳には薄っすらと雲海も見え、瞬きするたびに雲は曙色に染まる。幻想的な日の出が目の前で始まりだした。大観峰に着くと想像していた通りの人出だったがいい鑑賞場所を確保できた。

クライマックスの2025年11月17日の太陽が現れると、どこからともなく歓声とシャッター音が連続した。日本全国で毎日多くの人が集まる日の出スポットは大観峰に違いないと思う。それに外国人も多い。

八女大茶園の夕陽と阿蘇大観峰の朝陽を見せてあげることができて満足だった。

自転車乗りの朝食は大切だから大観峰から車移動してコスギリゾートのCafe & Bakeryを予約していた。ここを立ち上げたパン職人の上道大吾さんとは南阿蘇の「パンダイゴ」からのお付き合いで今回お世話になった。

モーニングメニュは「かごもりパンと阿蘇野菜プレート」
プレッツェルサンドと3種のパン、暖かいスープと地元野菜中心のボリューム朝食セットだ。食べきれないパンは袋に入れて持ち帰りができるのが嬉しい。大吾さんが挨拶に来られていつもながらサービスでバームクーヘンの試食もさせてもらった。

最後は阿蘇パノラマラインの放牧場付近からサイクリングを始めた。草原に佇む牛や馬の牧歌的な景色に感動されていた。中岳火口は風向きが悪く火山ガスの影響で閉ざされて少し待ったが見学してもらうことはできなかった。フィナーレは道の駅阿蘇までの15kmのダウンヒルを満喫してもらって握手とハグして私の仕事は終わった。

韓国から福岡にはカメリアラインのフェリーで来られるサイクリストが多かったが、昨年の10月からバッテリー発火事故があって電動自転車の船内持ち込み・受託手荷物 ともに受付ができなくなっている。よって航空機による輪行になるのでラウンデル・グリーンパックサービスの需要が高まってくるだろう。

韓国内の空港で提供しているラウンデル・グリーンパックサービスを提供するヴィルトゥカンパニー代表のヨンさんは、福岡空港を皮切りに日本国内でのサービス展開を本格化し、2025年内に松山、那覇(沖縄)、千歳(北海道)の各空港へサービスを拡大されるという。
2026年3月からは九州内の空港から韓国に向けてこの輪行支援サービスがスタートする予定であり、日韓のサイクリストが相互に旅行しやすい環境を整えるための第一歩になるだろうと話された。これには大いに期待をしたいものだし、もっとも近い外国で美味しい料理が揃っている韓国をサイクリングで楽しみたいものだと思っている。
